「選任」と「選出」。
両方に「選ぶ」という意味が含まれていますが、その使い方には明確な違いがあります。
たとえば「取紙役を選任する」も「取紙役を選出する」もありえる表現ですが、「優秀作品を選任する」は違和感があります。
なぜこのような違いが生じるのでしょうか?
この記事では「選任」と「選出」の区別をはっきりと解説していきます!
「選任」と「選出」の意味の違い
ずは、両者の基本的な意味を明確にしましょう。
- 選任 :複数の候補者の中から、特定の役職や職務を果たすのに適した人を選び、その任務を履行させること。
- 選出 :多数の選択肢の中から、特定の基準に基づいて選び出すこと。選ばれる対象は人に限らず、作品やアイデアなども含まれる。
これを簡潔に表すと、選任は「人を選び、特定の役割を担わせる」のに対し、選出は「広い範囲から選び出す」という違いがあります。
選任は企業や組織などで役職を決める際によく使われ、選出はコンテストや投票など幅広いシーンで用いられます。
例えば、「役員を選任する」は適任な人物を決める意味ですが、「優秀作品を選出する」は最も優れた作品を選び出すという意味になります。このように、使い分けを意識すると、より正確な日本語表現が可能になります。
「選任」の意味のポイント
選任のポイントは下記の3つです。
- 選ばれるのは「人」のみ
- 選んだ人に「任務が履行される」
- 任務には一定の責任や権限が伴う
たとえば「取紙役を選任する」は、特定の責務を果たすために適した人を選ぶ表現となります。この場合、選ばれた人はその職務において一定の責任を負うことになります。
一方で、「優秀作品を選任する」は不自然な表現となります。作品は人ではないため、選ばれた後に何かしらの役割や職務を担うことはありません。
また、「選任」には通常、公的または組織的な手続きが伴うことが多く、選考基準が明確に定められている場合が多いです。たとえば、企業の役員選任や官公庁の委員選任などがこれに該当します。
このように、「選任」は単なる選択ではなく、選ばれた人が特定の役割や責任を持つことを意味する言葉なのです。
「選出」の意味のポイント
選出のポイントは下記の3つです。
- 選ばれるのは人に限らない(物や作品、アイデアなども対象になる)
- 選んだ後に任務が履行されるとは限らない
- 選出の基準は場合によって異なり、単なる人気投票や専門家の評価など、多岐にわたる
たとえば「取紙役を選出する」も「優秀作品を選出する」も違和感がない表現です。
さらに、選出はスポーツやアワードの分野でも頻繁に使われます。たとえば、「MVP選出」や「年間最優秀アーティストの選出」などが一般的です。また、選出されたものが今後どのように扱われるかは、状況に応じて変わることが特徴的です。
たとえば、映画祭で作品を選出する場合、最優秀作品が表彰されることもあれば、単に上映リストに追加されるだけの場合もあります。このように、選出の結果がどのような意味を持つかは、その場の文脈によって変化する点が重要です。
「選任」と「選出」の使い方
選任と選出の使い方を具体的に例文をあげてご紹介しましょう。
- 選任
- 新しい基金の管理者として経営層を選任した。その際、経験や実績を考慮し、組織の将来を見据えた人材を選ぶことが重要視された。
- その任務に適した人を選任するのが重要だ。責任を伴うポジションのため、適性や能力を慎重に見極める必要がある。
- マンションの管理組合では、管理者を住民の中から選任することが一般的である。
- 会社の業務運営を円滑に進めるため、新しいプロジェクトリーダーを選任した。
- 選出
- 講演会のために、テーマにあった内容を選出した。その際、参加者の関心を引くようなトピックを優先的に選んだ。
- 学校のコンテストで最優秀の作品を選出した。審査員の意見を参考にしながら、公平な評価を行った。
- 社内表彰制度において、年間の優秀社員を選出し、表彰を行った。
- 美術館の特別展示会で、著名な作品を選出し、来場者に楽しんでもらえるよう工夫した。
まとめ
- 選任 :人を選び、任務を任せる。特定の役職や責任を担う人材を決定する際に使用される。例えば、取締役や委員会のメンバーなど。
- 選出 :人に限らず、単に選び出す。特定の目的のために、適した候補や作品を選ぶ際に使用される。例えば、コンテストの優秀作品やチームメンバーなど。
この違いを理解すれば、不自然な表現を避けるだけでなく、より適切な語を選ぶことができるようになります。
選任は特定の職務や責務が伴うのに対し、選出は広範囲にわたり、選ばれた対象が必ずしも役職や職務を持つわけではありません。この点を意識することで、正確で分かりやすい表現が可能になります。