「原本」と「原紙」という言葉、似ていてまぎらわしいですよね。
どちらも「原」という文字が共通しており、違いは「本」と「紙」だけ。
そのため、「原本」は「本」に関するもので、「原紙」は「書類」のことだろうと考えてしまいがちです。
しかし、実際には全く異なる意味を持っています。
この記事では、「原本」と「原紙」が持つ正確な意味やその使い分け方を解説します。
この2つの言葉の違いを知れば、日常での誤解を避けることができますよ。
さっそく見ていきましょう!
「原本」と「原紙」の意味の違い!
まず、「原本」と「原紙」がそれぞれ何を意味しているのかを簡単にまとめます。
- 原本: 書類や本のオリジナルとなるもとのもの。コピーする前の「本書」などが該当します。
- 原紙: カイコの産卵用の紙や、ガリ版印刷で使う専用の紙のことを指します。
「原本」はあらゆる書類や本のもとになるものを指すのに対し、「原紙」は特定の用途に使われる特殊な紙です。
つまり、これらは用途も対象も全く異なる言葉なのです。
次では、それぞれの意味をさらに詳しく解説していきます。
①「原本」の意味とは!
「原本」とは、書類や本のオリジナルであり、もとの形そのままのものを指します。
言い換えるなら「本書」とも呼ばれる、唯一無二の存在です。
たとえば、領収書を例に挙げてみましょう。
お金を受け取った際に発行される領収書には、朱肉を使ってハンコが押されていますよね。
この赤い押印がされているものが、オリジナルである「原本」に該当します。
一方、コピーした領収書は「複製」とみなされ、「原本」ではありません。
たとえカラーコピーで赤い押印が再現されても、それは本物の「原本」とは異なります。
「原本」はオリジナルであることが絶対条件で、同じ内容のものが複数存在することはありません。
もしも同じ「原本」が2つ存在すれば、誤解やトラブルを招く恐れがあります。
このように「原本」とは、最初に作られたものであり、後からコピーされたものではないという点が重要です。
②「原紙」の意味とは!
②「原紙」の意味とは
「原紙」とは、特定の目的に使われる紙を指し、2つの主な意味があります。
- 蚕卵紙(さんらんし)
カイコが卵を産むために使用される紙のことです。
この紙の上にカイコが産卵し、産卵された卵を検査して病気を持つものを排除します。
健康な卵だけが残された蚕卵紙は、その後の生産工程に使用されます。 - ガリ版印刷用紙
かつて謄写版(とうしゃばん)印刷に使用されていた専用の紙です。
この紙の表面にはロウが塗られており、鉄筆で書き込むことで文字を転写します。
ガリ版印刷は、現在のコピー機のような役割を果たしていました。
特に学校や職場での書類複写に使用され、広く普及していましたが、1960年代以降はコピー機の普及により次第に姿を消しました。
「原紙」は、このように特定の用途に限定された紙を指す言葉です。
③「原本」と「原紙」の違いを整理!
「原本」と「原紙」は、名前が似ているだけで全く異なる意味を持っています。
以下にその違いをまとめました。
用語 | 定義 |
定義 | 複写や翻訳などを行う前の、もとの書類や本。唯一無二のオリジナル。 |
原紙 | カイコの産卵用の紙、またはガリ版印刷専用紙など、特定の用途に使われる紙。 |
「原本」は本書や書類そのものを指し、作成された最初のものという性質を持っています。
一方で「原紙」は、蚕卵紙やガリ版印刷用紙といった特殊な目的の紙を指します。用途も対象も全く異なるので、混同しないように注意しましょう。
2.「原本」と「原紙」の辞書での意味!
辞書での「原本」と「原紙」の定義も確認しておきましょう。
①「原本」の辞書での意味!
- 原本:
- もと。根本。根源。
- 写本・翻訳・改訂・引用などを行う前の、もとの書物や文書。(例: 戸籍の原本)
このうち、2番目の意味がこの記事で解説している「原本」の定義に該当します。
なお、1番目の「根源」という意味は、物理的な「本」以外を指す場合に使われます。
②「原紙」の辞書での意味!
- 原紙:
- コウゾの皮を原料とした厚い紙。蚕卵紙として使われる。
- 謄写版に使われるロウ引きの紙。
これらの意味はすべて、特定の用途に限定された紙を表しています。
「原本」とは明確に異なる言葉であることがわかりますね。
3. 「原本」と「原紙」の使い方!
次に、「原本」と「原紙」を実際にどのような場面で使うのか、例文を見ながら確認してみましょう。
①「原本」の使い方
- 契約書の原本は、一定期間保管することが義務付けられている。
- 領収書の原本には、朱肉で押印された部分が必要です。
- 公文書の原本が所在不明になり、大きな問題となった。
- 原本を提示できない場合は、コピーでは代用できません。
②「原紙」の使い方
- 明治時代には、蚕卵紙の品質を維持するため厳格な規定が設けられていた。
- ガリ版印刷では、専用のロウ引き原紙を使って文字や絵を複写していた。
- 障子紙と一緒に、蚕卵用の原紙も製造しています。
- ラオスでは、謄写版に原紙を使用せずに作業を行う方法が採用されている。
「原本」は書類や本のもととなるものに使われ、「原紙」は特定の紙の用途に基づいて使用されます。
この使い方の違いを知っておくことで、混乱を防ぐことができます。
まとめ:「原本」と「原紙」の違い
「原本」と「原紙」は、名前は似ていますが、その意味は大きく異なります。それぞれの違いを再確認しましょう。
用語 | 定義 |
定義 | 複写や翻訳などを行う前の、もとの書類や本。唯一無二のオリジナル。 |
原紙 | カイコの産卵用の紙、またはガリ版印刷専用紙など、特定の用途に使われる紙。 |
日常生活では「原本」が使われる場面が多いですが、「原紙」も歴史的・業務的な文脈で重要な役割を果たします。
正しい意味を理解し、使い分けることで誤解を防ぎましょう。